研究者 | 年 | 企業家概念 |
Cantillon | 1725 | 先見の明をもち、危険を進んで引き受け、利潤を生み出すのに必要な行為をする者 |
Say | 1803 | 他者を結びつけて生産的な組織体を形成する行為者 |
Menger | 1871 | 予見に基づき資源を有用な財に変換する変化の担い手 |
Marshall | 1890 | 多様な生産要素を需要に適合させていくうえで問題を解決し、効用を作り出す主体 |
Shumoller | 1900 | 事業の危険を負担し、イニシアティブをとる者 |
Weber | 1905 | 組織的合理的に正当な利潤を使命として追求する者。革新的企業家はその一類型。 |
Shumpeter | 1912 | 革新者、新結合を遂行する者 |
Cole | 1959 | 財の生産・流通を目的とする利益指向型企業の創設、維持、拡大に挑戦する者 |
McClelland | 1961 | エネルギッシュで適度なリスクテイカー |
Kirzner | 1973 | 新しい価値のある目的および潜在的に有用で入手可能な資源に対する機敏性をもつ個人 |
Shultz | 1980 | 不均衡に対処する能力を持つ者 |
Drucker | 1985 | 変化を探し、変化に対応し、変化を機会として利用する者 |
Baumol | 1993 | 斬新、大胆、創造力、リーダーシップ、持続力などを活用する経済主体 |
Tmmons | 1977 | コミットメントと強固な決意、リーダーシップ、起業機会への執念、リスク、曖昧性、不確実性に対する許容度、創造性・自己依存・適応力、一流たらんとする欲求、その他の望ましいが会得困難な行動と態度として、エネルギー、健康、情緒の安定、創造性と革新性、知能、人を奮起させる能力、価値観 |
Pinchot | 1985 | 自由を求め、目標達成型であり、自己依存性が強く、自ら目的を設定してどんどんやっていく。ビジネスに精通しており、管理能力や政治的手腕より、事業に対するすぐれた直観を持つ。プロフィットセンターの責任者としての経験をもっている。失敗や間違いを自己の成長の糧とする。自分がよいと思ったようにする。決断力、実行力 |
McGrath, & MacMillan | 2000 | 情熱的に新しい機会を求める、全選択肢を追いかけるのではなく、唯一の最高の機会を求める、実行、特に臨機応変の実行に焦点を当てる、自分たちの領域に周囲の人々のエネルギーを向かせる |
引用文献:
Shumpeter, J.A., 清成忠男編訳「企業家とは何か」1998, p.171
Timmons, J. A. New Venture Creation, Richard D. Irwin, Inc, 1977.
千本倖生、金井信次訳 『ベンチャー創造の理論と戦略』 ダイヤモンド社、1997, p.188
Pinchot, 1985, p93-98
Corporate Venturing, Block, Z., & MacMillan, I. C., Harvard Business School Press, 1993, p.135
図表)Bhideによる企業家の分類
分類 | 内容 |
並の企業家 | 事業アイディアは、それほどイノベーティブではなく、利益が得られる確率もゼロ周辺 |
有望な企業家 | イノベーティブなアイディアを持ち、利益が得られる確率がプラス。クレディビリティ、一回きりの低投資・高不確実性に対するイニシアティブ、決断力、機会主義的適応力、曖昧性の受け入れ、オープンマインド、セルフ・コントロール、セールス・スキルなどを備えている。 |
VC支援の企業家 | イノベーティブなアイディアまたは技術を持ち、クレディビリティ、チームの協力、初期健全な事業計画も持つ。 |
企業内企業家 | クレディビリティ、チームの協力、思慮分別、健全な初期事業計画を持つ。 |
革新的企業家 | ビジョン、変革、創造的統合、抽象化、インスピレーション、長期的目標、長期的な戦略、長期的な生存を持ち、クレディビリティ、カリスマ、伝道的能力、個人的磁力、長期間にわたる高投資・低不確実性に対するイニシアティブ、不屈の精神、リスクへの挑戦、継続性を持つ。 |
「Bhideは、企業家を5つの類型に分類したが、どの類型の企業家にとってもクレディビリティが重要であることを示唆している。特に、スタートアップの企業家については、
- 「資源提供者に対してクレディビリティがかけているため、事業が非常に不確実になり、ほとんどの企業家は成功しないのである(p.239)」、
- 「若い企業のクレディビリティと評判は、企業家のそれと強くリンクしている(p.304)」、
- 「若いビジネスでは、認知は現実と同じくらい重要である(p.79)」、
- 「新技術は、大企業とスタートアップの違いを不鮮明にする(p.346)」
とし、成功の重要な要因であることを発見した。
この場合のクレディビリティは、社会的信用というような意味で使われており、VC、エンジェル、銀行、証券市場、取引先、行政機関、その他資源提供者に認知されるものである。
さらに、Bhideが研究対象とした多くの企業家たちは、大きな約束をしたり誇張したりしてクレディビリティを得たのではなく、自分たちができる程度以下の期待を顧客や関係者に持たせ、それを超える仕事をすることによって彼らに満足してもらうという方法でクレディビリティを構築しているという。
このようにしてクレディビリティの低い企業家は、いろいろな工夫をこらしてクレディビリティを構築していることを発見した。
Bhideの研究によれば、成長段階にいる企業家や事業が軌道に乗った企業家は、投資を獲得しやすくなるといわれる。有望な企業家が成長段階に入れば、VCからの支援を得られやすくなり、さらにVC支援を最大限に活かし市場競争に勝ち残る者は、革新的企業家への道が開かれる。
有望な企業家、VC支援の企業家、革新的企業家へと成長するかどうかを左右するカギは、成長段階前のスタートアップ段階の「何も資源を持たない」状態の企業家が、投資を獲得できるかどうかである(Bruderl & Preisendorfer, 1998)。」